三菱重工で開発を進めていた、パッチレスで印刷紙面の濃度制御を行う新聞用印刷品質制御装置は、読売新聞東京本社での検証と実用化への共同作業を経て“DIAMOND EYE”として誕生しました。

(1)完全デジタル化の中で抱えていた課題とは

読売新聞東京本社
制作局技術三部
高月 宏一次長

 広告クライアントが新聞広告に求めるのは、高印刷品質と全国的に差のない印刷品質だ。従来のように印刷オペレータの感覚と技量に頼らず、バラツキのない高レベルの印刷品質を、安定して提供するにはどうしたらいいか。そんな課題に対して、読売新聞では、高位・等品質カラー紙面の自動印刷システムを開発し、実用化にこぎつけた。読売新聞制作局技術三部の高月宏一次長に開発までの経緯を伺った。
 「読売新聞では、平成15年より広告入稿の完全デジタル化を実施しました。それ以降クライアントに対する入稿データの確認は、インクジェットプリンタで出力した色見本を提示していますが、この色見本は輪転機の印刷プロファイルが反映されているので、広告制作者はより紙面掲載時に近い発色をイメージすることができます。また作業者にとっても、色の再現範囲が輪転印刷に近いため、色合わせが容易になるというメリットがあり、その結果、機械間差も徐々に減少してきていました。ところが本紙印刷を行っている全国29の工場では、機械特性や使用資材、オペレータの感性の違いなどにより、機械間差や工場間差が生じているケースも見受けられたのです」

(2)プロジェクト結成と“DIAMOND EYE”との出会い

 新聞印刷は、商業印刷のようにカラーパッチを入れることができないので、校正刷りの色見本に近くなるように色調整をしていくといった、オペレータのスキルに頼るところが多く、工場によって、機械によって差が生まれるのは仕方がないとされていた。
 「輪転機が違うから色が合わない。ブランケットが違うから色が合わないなど、さまざまな要素があると思いますが、では何がどういう原因でどう絡み合っているかということは、はっきりわかっていなかったのです」と高月次長は言う。
 そこで読売新聞では、広告クライアントが望む印刷品質の向上と安定化といったニーズに応えるために、社内の上流システムから下流システムにわたる技術者を召集してプロジェクトチームを結成。@色調に関する再現性・均一性向上 A省力化・省人化 B損紙低減 の3つを実現するための自動化システムの導入が目標に掲げられた。
 「オペレータがやっていることすべてを自動化しながら、常に同じ高品質のものを出せるものが欲しいと考えていたときに、三菱重工さんから提案されたのがカラー対応の紙面検査装置を発展させ、濃度制御も付加可能な印刷品質制御装置“DIAMOND EYE”だったのです」
 きっちりとした色調管理をするには、システムが必要だと考えていた矢先のこと。特に、三菱重工の提案はカラーパッチなしで制御をするというものだったため、読売新聞のニーズにかなりマッチしていた。高月次長は提案内容についての当初の感想を次のように語る。
 「正直言って、本当にこんなものができるのかというのが最初の印象でしたね。ただ、理論を聞くと理解できるし、要素技術もかなりしっかり確立しているようだったので、これはテストを重ねていけば、いいものができるんじゃないかなという予感はありました」

(3)バラツキのない高品質カラー紙面が実現可能に

品質制御装置用イメージセンサ

 三菱重工による提案が受け入れられ、両社の技術者による合同チームを結成。2003年6月に「デジタル画像データを利用した品質向上と省人化システムの開発」に取り組むことになった。開発にあたっては、CTPサーバでの画像データ(二値)を使用すること、すべての工場で使用できるよう他社の輪転機との連携も図れる汎用性の高いシステムとすることを基本方針として進められた。
 一般に、新聞社におけるCMSは商業印刷のように容易にはいかない。
 それは、工場数が多い上に、新文字の登録が常に必要となるため、RIP装置は本社に設置し、工場へはRIP済の二値データを配信していること、そしてリスク分散のため、工場ごとに異なる輪転機やインキ、紙を使用していたりすることが多いからだ。また限られた時間内で、輪転機毎のプロファイルを反映した印刷データを作成することも現実的に難しい。読売新聞では、全国同一品質を実現するにあたって“基準機”の色に他工場の輪転機の色を合わせるという方式を採用した。DIAMOND EYEの採用により、インキや紙といった印刷資材差、湿し水成分や運転時間による機械温度などにより生じる印刷機の特性を吸収することができるからだ。
 開発はセンサの性能確認などの要素テストからはじめ、課題を抽出しながら、センサの改善を行いつつ、並行して色認識のソフトの改善を行い、実際の輪転機に搭載して、約1年間の基礎テストを重ねた結果、実機に搭載して本番の新聞印刷環境でのテストを実施、これまで手動で行っていた色合わせ作業をコンピュータに任せられることが確認された。多くのカラー面を短時間で校正刷りに合わせていくのは大変骨の折れる作業であり、熟練のオペレータのみが許されていた仕事。それがDIAMOND EYEなら、画像データとセンサで取得したデータを見比べ、リアルタイムで補正をかけるといった一連の作業を自動で行うことができるのだ。
 「15段の全面広告など色合わせ作業でも、だいたい300部から400部くらいで色があってしまう。しかも40面のうち16面にカラー原稿があったとしても、それをいっぺんに調整できてしまうわけですから、かなり早いと言えます。
 全国の印刷工場への展開はこれからですが、このシステムの導入により、工場間のバラツキも、時系列的なバラツキも、自動化により解消されるというのが大きいですね。製品管理という観点からみて大変意義のあることだと思います」と高月次長は語る。