(1)現状認識

 印刷機械は“印刷物製造プロセス”の最終成果を出力して“商品”を作る出力インフラであり、常に安定した印刷品質を保証することが必要である。CTPの登場によって、これまで製版工程で発生した見当ズレや刷版上の汚れなどの問題はほぼ解決されており、見当精度が高く、網点再現性の高い刷版が繰り返し供給されるようになった。
 色間見当に関しても、刷版と印刷機の版万力レジスターピンとの位置関係を調整することで見当合せ時間が短縮され、横目の薄紙印刷で発生する紙伸びなどによる見当ずれ以外は大幅な修正が不要となった。
 また、色出しに関しても、基準濃度の設定とインキ膜厚の管理をキチンと行なえば、かなりのレベルでの色調整ができる状態になっている。当社が24年も前に開発したオートプリセットインキングシステム(API)が進化して、現在ではプリプレスからデジタルデータの絵柄情報が直接印刷機へ送られるようになり、高精度のインキキー調整が事前に行われている。
 さらに、印刷機械のプロファイルによって調整されたプリプレス機器でカラーマネージメント(CMS)を実践することで、校正刷りと本機印刷とのマッチングを行う試みもスタートした。

 

(2)工程のボトルネック解消

 全体の工程を考える場合、印刷機メーカーとして当社が考えるボトルネックには大きく分けて2つある。まずひとつは、オペレータの感性に依存する“色”の問題である。現状、校正見本に色を合わせる作業では、オペレータのスキル、すなわち職人技に依存する部分が大きい。校正見本をいち早く、そして何度も刷り出すためには、色を定量評価できる装置が必要となってくる。この部分に対する当社の取り組みが、独自のセンサーを搭載した絵柄色調管理装置(MCCS)である。


MCCSII(色調管理装置)

 もうひとつのネックは、印刷機械自身に関する問題で、枚葉機では“インキの乾燥”の問題であり、輪転機では“カットオフサイズ”の問題である。当社は、枚葉機の乾燥対策のひとつとして、drupa2004において、オリジナルの機構を持つ両面枚葉機タンデムパーフェクターで、両面の油性印刷+水性ニスコーティングを1パスで行う実演を行なった。この分野の開発では、印刷会社の皆様とのコラボレーションの枠をさらに広げ、印刷資材メーカーや素材メーカーと一緒になって推進していくことが大切だと考えている。一方、商業オフ輪にはカットオフサイズが固定され、天地方向の刷り長さが変えられないという制約があるが、これを可変にする試みとして、当社はバリアブルカットオフ機「MAX−V」を同展示会に出展した。

ワンパス両面枚葉印刷機
タンデムパーフェクター
(両面コーター+同位相版交換装置)
  バリアブル商業用オフセット輪転機
LITHOPIA MAX-V(プロトタイプ)

 

(3)「部分」最適化から「全体」最適化へ

 プリプレス工程でのデジタル化が進み、印刷機の自動化が機械単体として進んだ今日、部分的な最適化だけでは、印刷会社の効率化に限界がある。部分的な最適化に留まらず印刷工程全体を見た“全体最適化”による生産の効率化を推進することが必要と言われている。
 昨年のdrupa2004は、別名JDFドルッパと言われたように、各機械メーカーや資材メーカーなどは、JDFに対応した機器やシステムを発表し、これからはJDFを基準フォーマットとした印刷産業のデジタルワークフローを目指すことを宣言した機材展のようであった。これまでのPPF基準のCIP3でもプリプレスとプレス、ポストプレス間の情報をつなぐことでCTPからプレスへのデータ転送やCMS(カラー・マネージメント・システム)の構築なども可能だが、CIP4/JDFに発展させることで、さらにMISをはじめとする管理情報システムなどと一体化することができ、受注管理・工程管理や資材管理など印刷会社の経営全体を包括した“全体最適化”が可能となると提案している。
 当社では、デジタルワークフローの構築に関しては、印刷機械を中心としたプレス周辺のワークフローである“MAX-net”の開発を進め、これを各印刷会社がそれぞれの最適化のために選択した他メーカーの機器やシステムとつなげることで、全体システムの構築をサポートすることを方針としてきた。そのためCIP3に引き続きCIP4/JDFのコンソーシアムに参加することでプレス前後の機器やシステムのオープンな接続を指向している。さらにNGP(Networked Graphic Productin)にも参加することで、予め参加メーカー間でのJDF接続環境を整備するなど積極的な対応を心掛けている。


デジタルワークフロー構築に対応する"MAX-net"

 

(4)標準化の必要性

“全体最適化”を実現するための必要条件が“標準化”であり、効率化を進めるには標準化が不可欠である。印刷における標準化が必要な例のひとつは“色”の問題である。
 わが国でも“印刷色標準”の設定をするために、“ジャパンカラー”が設定されている。ジャパンカラーは、最近では雑誌広告や新聞広告などの分野で実用化が進められているが、残念ながら印刷業界全体に“これがわが国の色のスタンダードである”と認識されるに至っていない。印刷の基準を決めること、そして基準に基づいて品質保証をすることが、印刷が工業製品としての地位を確立することである。

JAPAN COLOR 2001 チャート
 一般的には“標準化”と“差別化”は相反することのように考える。標準化を進めると同じ物が世の中にあふれ、価格競争に陥るのではないかと考えられがちだが、ものづくりの現場では標準化を進め、効率を高めていくと、そこに“差別化”の切り口が見えてくるはずである。すなわち製造プロセスのバリューチェーンの分析、つまりどの部分が自社の特長で、どの部分が付加価値をもたらすかを把握することが重要で、その結果、他社に負けない競争力の高い部分は自社に残し、競争力のない部分は標準化を進めておれば、容易にアウトソーシングすることなどが可能となる。しかし、いくら設備やシステムを標準化しても、そこに“創意工夫”をする意志がなければ差別化はできない。
 すなわち、ものづくりは“人”が中心である。

 

(5)印刷機械の安定性の実現

 標準化を実現するための前提条件は、あくまでも印刷機の“安定化”である。最終出力機である印刷機械の出力が一定していなければ全ての標準化作業は砂上の楼閣となる。印刷機械メーカーとしては、印刷物を安定して出力できる印刷機の供給や維持管理ノウハウの提供が最大の使命と考えている。
 特にお客様に印刷機械のメンテナンスを適宜、実践して頂くことが必要である。
 機械の予防保全は、突発事故を減らし、機械のダウン時間と修理費を節減するだけでなく、安定した“生産”を実現する。また、標準印刷を実施するには定期点検が不可欠である。当社ではトレーニングスクールでメンテナンスコースを開講しているが、これ以外にも各社の要請に基づくTPM(トータル・プリベンティティブ・メンテナンス)セミナーも提供できるので、是非声を掛けて頂きたい。


トレーニング風景

 

(6)2008年の当社印刷機械事業

 2008年の当社の印刷機械事業としては、印刷業界と幅広くWin−Winの関係を構築できるものづくりを進めていくことが基本と考える。単一企業では解決できない問題も、コラボレーションで解決し、その成果を分かち合って共に利益を享受する関係を幅広く構築していく。そして直接のお客様である印刷業界に対するテーマは(1)「印刷会社に“差別化”を提案できる印刷機械を提供すること」、つまり各社の製造プロセスにおける工夫の違いに対して、きめ細かく対応していくことが必要である。また「意図した通りに動く印刷機械が提供できること」であり、具体的には高品質化への対応や効率向上はもちろん、インライン化や多様化への対応、印刷ノウハウの蓄積、学習機能の強化など印刷機械としての基本的な機能を極限まで向上することを目標としたい。さらにプリプレスや周辺機器とのオープンインターフェイス化の推進も目指していきたい。
 さらにもうひとつ大切なテーマは(2)「環境対策」である。“環境”に対する社会的な価値観の変化は、印刷業界にも大きな影響を及ぼすと予測される。 すでにグリーン購入が実施され官公庁や環境意識の高い企業の発注条件は、環境にやさしい印刷物を指向している。また廃液や排煙などの工場廃棄物に対する規制が強化されてきており、工場の操業を継続するには、法規制への対応も不可欠となる。
 三菱重工は、火力発電所、化学プラントやゴミ焼却工場などにおける排煙脱硫や廃液処理など豊富な技術とノウハウを有し、エネルギーを無駄なくクリーンに使用する機器を提供する総合メーカーである。この技術を印刷工場向けに適用することで“環境にやさしい印刷工場(Eco-frendly Printing Factory)”の実現に努力していきたいと考えている。

これからも当社はお客様とのコミュニケーションを密にして、お客様が本当に必要とするものをご提供するメーカーであることを目指していく所存です。


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