標準の策定
 印刷機のメンテナンスや資材の管理、そして工場環境の整備の方針が固まったら、次に標準となる印刷物の製作を行う訳ですが、標準をどのようにして決定するかが問題になります。これは印刷会社の状況によっていろいろな決め方がありますが、代表的な決め方としては次の2つが考えられます。
  (1) JAPAN COLOR等の規格を利用する。
  (2) 独自の基準を作る。(現状印刷している濃度レベルを基準にする)
<図4>JAPAN COLOR 2001 チャート
 基準作りは、最初が肝心ですが悩んでいては進みません。難しいと悩む前に一度いくつかの条件で印刷してみましょう。JAPAN COLORの濃度で印刷してみて、従来の印刷物と比較して色の調子や網点の形状はどうか、インキの乾き方はどう違うかなど、直接生産性に関連する事柄もチェックすることが重要です。JAPAN COLORでは、紙質をアート、コート、マット、上質等の種別に分類しています。いくつかを試験して、その状況や結果を営業、プリプレス、印刷現場の人間が集まって検討・評価していくことも、標準化へのモチベーションアップに繋がり、会社全体でのCMSの取り組みが進展すると思います。

プロファイルの作成と運用

 標準濃度が設定できれば、その濃度でプロファイルチャートを印刷し、印刷機のプロファイルを作成します。しかし、この時の印刷上の注意点は、プロファイルはその印刷機の平常の特徴を表すものですので、平常の印刷を行うことが重要です。テストチャートを印刷するからといって、いつもは印刷速度13,000sph前後で印刷している機械なのに8,000sphで印刷しては、平常の色再現ができません。できるだけ通常多用する印刷速度で印刷しましょう。また、冬場や週明けの寒い朝一番で、まだ工場も機械も暖かくなっていない状態での印刷も不適です。できるだけ標準的な印刷環境で、プロファイルチャートを印刷しましょう。平均的な状態でプロファイルを取っておくと機械が変動した場合でも、許容幅が広がります。
 また、当然のことですが、機械メンテナンスの章でも述べましたが、機械的な障害[ダブリやスラー]が許容値内であること、ブランケットが傷んでいないこと、ローラが硬化していないこと等の事前チェックは必ず実施して下さい。
 このようにして作成した印刷機のプロファイルをCMSソフトやDDCP等にフィードバックすることで、オフセット印刷機の発色特性で印刷しやすい校正刷りができ上がってきますので、印刷機では、標準濃度に合わせるだけで、印刷物と校正刷りの色を一致させることが可能となります。
 前述の機械のメンテナンスや資材、環境管理に加えて、色調管理をより安定させるためのインキ元ローラの温度調整や、CIP3/4データを利用したエキスパートシステム(インキ量を自動プリセットするソフト)や99号で紹介したAPI関数の最適化によって、インキキープリセットだけで一発で標準濃度を出し、その時の絵柄の色を限りなく校正刷りに近づけることが最終的な目標なのです。

標準印刷の運用例
<図5>試験絵柄
 現状では、まだ完全とは言えませんが、標準化に対する取り組みを実施している会社は増加しつつあります。機械のメンテナンスを徹底し、ローラの温調装置や色調管理装置(MCCS)を導入して標準印刷を運用している例についてご紹介しましょう。

印刷機色再現の安定性
 印刷機の色再現の変動を定量的に確認するために約半年に渡り2ヶ月に1回のペースで印刷品質評価絵柄[図5]を、色調管理装置を利用して標準濃度で印刷しました。その色変動の結果を図6に表します。
 色変動の評価手法としては、評価絵柄の中にあるIT8チャート(928色)[図7]全色の違いを分光計で計測し、その差を色差ΔEで表し、928色の平均値を求めて評価しました。このグラフからも解るように、半年間の色変動は、ΔE<2以下の結果になり、かなりの安定性が確認できました。

 
<図6> 半年間の色再現性の変化   <図7>色差評価チャート[IT8.7/3]

標準印刷の効果
 このような標準印刷を行った場合の効果は、どの程度あるのかを明らかにするために、下記の条件で比較試験を行いました。従来方式として、校正刷りには平台校正を使用して、色合わせはオペレータ任せで、実施してもらいました。OKレベルの判断もオペレータに判断していただき、OKレベルが出てからも、さらに追い込み調整を実施し、限界まで調整を実施しました。それに対し標準印刷方式では、校正刷りには印刷機のプロファイルをフィードバックしたインキジェットプルーフを使用、印刷機側では、エキスパートソフトとAPI関数を利用して刷り出し、色調管理装置を使ってベタ濃度の調整を行い、サンプルを取得しました。その結果を、図8に示します。この図8は、横軸に印刷枚数、縦軸にそれぞれの目標(平台校正紙、IJプルーフ)と印刷サンプルの色の差を、IT8チャートの色差平均で示したものです。
<図8>色調整比較試験結果
 この比較試験結果より、標準印刷方式[IJプルーフ]の方が、(1)色合わせが早いことと(2)校正刷りと印刷物の色が良くあっていることが解ります。従来の平台校正では、オペレータが懸命に色調整をしてもΔEがあるレベルで限界に達し、標準印刷方式の色合わせレベルまで達しないことが解ります。すなわち、異なる色再現(平台校正と印刷機)のバランスまでは調整することができないことを表しています。

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