印刷機のメンテナンス
印刷機の大半の箇所は、高速で回転していたり、往復運動をしていたりします。しかもその精度は、印刷用紙上で100分の1ミリのずれも起こさないように、非常に高い精度で加工され、組み立てられています。そのために各部の接触する箇所の磨耗量を最小限にして、長期間、高い精度を維持する訳ですが、そのためには、潤滑油等の給油が必須となります。給油を怠ると磨耗が増大し、“がた”による精度不良が発生し、印刷品質低下や品質の不安定がおこり、さらには、ギヤの磨耗、ベアリングの焼きつき等の大事故に発展することがありますので、取扱説明書に従った定期的な給油は最も重要なメンテナンス作業です。
ローラのニップ圧調整も、印刷品質を保つ上で重要になります。ゴムでできているローラは、徐々に油成分が抜けていき硬くまた細くなっていきます。そのため、隣接するローラとの接触圧が減少するので、インキの転移性能が変化します。特にインキの呼出ローラは、インキ元ローラとの接触が少ないためニップ圧変動がインキ供給に大きく影響します。また、呼出ローラはインキ元ローラとインキ練りローラの間を高速で往復運動し、衝撃を受けることもあり、ゴムにとっては、痛み易い環境なので特別な配慮が必要です。
通常の印刷では、湿し水の水上がり量でインキの着肉性や網点の太り方が変化します。また、水を上げ過ぎるとローラ上でインキが過乳化状態となり、インキの転移性が大幅に悪化し濃度変化の原因となることもあります。
ただ実際の印刷現場では、湿し水を極限まで絞ると汚れが発生する可能性があるために水は上げ気味で印刷されているのも事実です。水上がり具合は直接的には見ることができないため、設定の方法が難しいと言われていますが、標準印刷を実施して、インキを一定量供給する状態が再現されると、水の必要量も自ずと決まってきます。従って湿し水の供給量をいつも一定にすることが重要になります。そのためには水着けローラや水元ローラの硬度チェック、クロムローラの親水化メンテナンス、水周りのローラのニップ点検等が必要となります。
資材関係のメンテナンス
インキと水は、色に関しては最も重要な材料であることは言うまでもありませんし、標準化を行う際にきちっと管理すべき項目です。しかし、インキや水(エッチ液)は、ともすれば価格重視で選択され、簡単に変えられたり、変更の検討が印刷現場だけで行われ、会社全体で管理されていないこともしばしばです。これでは色の標準化は困難です。
インキも水(原水とエッチ液)との相性でその特性が変わります。ベタを刷った時の色の違いは、それほど大きくは変わりませんが、網点のつぶれ具合はかなり違うことがあります。当然、インキの重なり具合(トラッピング)にもかなり影響しますので、結果的に絵柄の色合いが大きく変わってしまうこともあります。また、印刷機上での安定性は、インキと水の組み合わせでかなり変化します。一例をあげると同じインキでも、湿し水の種類を変化させると、図3のように平衡含水率が変化します。タイプAのように平衡含水率が高いと、乳化しやすい組み合わせということで、機上でのインキ転移性が悪化し、ローラ上にインキを抱えないと希望の濃度が出なくなります。そのため、インキ調整の応答性悪化や極小絵柄時の濃度変動等の問題が発生しやすくなります。また逆に平衡含水率が低すぎると、インキ内部に水が入りづらく、水を上げすぎた場合、インキの表面に水が浮き出た状態(表面水)となりインキの転移性を急激に悪化させ、濃度変動が発生します。従って、機上でのインキ転移性が安定し、水元調整量の多少の変化にも追従できる含水率になるインキと水の組み合わせを選択することが重要となります。図3は当社が実施している要素試験の結果でインキと水の乳化状態を計測して、適正な含水率を求める研究資料の一部です。
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| <図3> 平衡含水率の適正試験 |
その他、刷版の種類による保水力や画線部のインキ付着性の違い、ブランケットの種類による網点の太り(ドットゲイン)や着肉性の違い等々、印刷資材が印刷機の発色特性に与える影響は非常に大きなものがあります。このような環境の下で、印刷機の発色を安定させ、プリプレスにフィードバックしてCMSを実現しようとする場合は、印刷資材の管理は従来のように印刷現場だけでなく、会社全体で管理し、安易な変更は極力避け、変更する場合にも、従来との変化を定量的に捉え、必要な箇所をチューニングし直すことが必要となります。
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