ジョブ切り替えに伴う損紙を低減するのがMAX―Expertを構成する各種機能である。図3に示す刷了から次ジョブ開始に至る過程のうち、折替え・版替え・印刷調整以外は全てMAX―Expertの機能である。オペレータの操作は「▼」印の付いた時点、すなわち「刷了」、「印刷開始」、「印刷調整後の加速」の3回だけであり、その操作もメインデスクのタッチパネルで該当するボタンを押すだけと極めて簡単なものとした。MAX―Expertの設定変更は、タッチパネルで簡単に行うことができる。SACを例に取ると、オペレータは図4に示す画面にて、印刷物の要求品質に応じた加速時間を選択し、印刷時間と印刷品質のバランスを取ることができる。
また、IPCIIを採用した場合には、印刷条件やリピートデータに基づいて、合致する条件のMAX―Expert設定が自動的に選択される。
MAX―Expertの各機能の詳細を次に述べる。

図3 MAXのジョブ切り替え時動作 |
|

図4 MAX損紙低減設定画面 |
(1)SPE(Smart Print End)
SPEは、刷了時にインキローラ上のインキ履歴を解消することを目的としている。通常、印刷中のインキローラ上には、絵柄に依存しない基準量とも言えるインキ膜厚があり、その上に絵柄に対応したインキ量が分布している。この絵柄対応分のインキ膜厚を残したまま絵柄を切り替えると、次ジョブ刷り出し時の濃度安定に多大の時間を要する。
SPEは、インキ呼び出し“脱”状態で印刷を継続することで、インキローラ上の絵柄対応のインキを紙に吸着させ、インキローラ上のインキを基準状態に戻す。
 |
|
図5 BRC2による白損低減
|
(2)BRC2(B/W Reducing Speed Control)
ブランケットウォッシャーは、印刷ユニットを回転させてブランケット上のインキを拭き取るため、洗浄中は印刷機を運転し続けなければならない。従来の商業用オフ輪では、印刷機全体がラインシャフトで結合されているために、ブランケット洗浄中には印刷機の洗浄速度と同じ速度で印刷用紙も送り出し、その用紙が白損になっていた。
MAXシリーズでは、用紙と印刷ユニットを異なる速度で動かすことが可能なシャフトレス技術を応用し、ブランケット洗浄中には、印刷ユニットのみを洗浄速度で回転し、一方用紙は最低速で送る「異速制御」を行うことで、洗浄中の白損低減を実現した。
BRC2の標準設定では、洗浄速度を200rpm、用紙速度を最低速とすることで、洗浄中の白損を70%低減している。
なお、BRC2の作動はSPEに引き続いて自動的に行い、オペレータの特別な操作は必要としない。(特許出願中)
(3)プリテンション機能
シャフトレス駆動では、印刷ユニットの運転を開始する前に、ドラグローラを一時的に早く回転させることで、印刷機内の用紙の弛みを短時間で解消することができる。
さらに、オプションの新型モータ式給紙装置との組合せでは、給紙側・折機側の両方に用紙を引くことでより短時間・高精度なプリテンションが可能となる。(特許出願中)
 |
|
図6 MAX-Expertによる印刷開始
|
(4)BRC(B/W Liquid Reducing Control)
ブランケット洗浄中にブランケット胴上のギャップ部に浸透した洗浄液は、印刷開始後に遠心力や振動で徐々に外に飛散し、汚れの原因となることがある。印刷調整速度で飛散が無くなっても、最高速まで加速する過程で新たに汚れが発生するなど、対策が困難な刷り出し損紙発生要因であった。
MAX―Expertでは、印刷開始前に印刷ユニットのみを最高速で空転し、遠心力でギャップ部の洗浄液を予め吹き飛ばすBRC機能を搭載した。
図6に示す通り、BRCは印刷ユニットを最高速で運転する一方で用紙はドライヤ昇温待ち速度で駆動する。この結果、吹き飛ばした洗浄液が用紙上の一箇所に集中しないので、一般的な用紙では断紙の危険はない。(注2)
さらに、BRCとQSI―2をドライヤ昇温待ちと並行作業とすることで、印刷準備時間の短縮をも実現している。また、BRCによる印刷ユニット高速空転はインキならしの効果も合わせ持ち、先述したSPEと組み合わせることで、インキ膜厚の完全な均一化が可能となる。
(注2)ブランケット洗浄装置のタイプやブランケット洗 浄の設定次第では、BRCは必須では無い。(特許出願中)
(5)QSI―2(Quick Start Inking)
QSI―2は、SPE後の均一なインキ膜厚の上に、次ジョブの絵柄に応じたインキ分布を加える機能である。任意のインキローラ上におけるインキ膜厚と画線率の関係を、単純化して図7に示す。
QSI―2は次ジョブの印刷開始に先立ち、次ジョブの画線率に応じたインキ膜厚を形成し、インキ供給の早期安定化を実現する。
QSI―2作動は、BRCに引き続き自動的に行う。
色替えなどでインキローラ洗浄を行った場合、従来は低画線部の濃度が安定するまで1000部以上の印刷が必要であったが、MAX―Expertではインキローラ洗浄した場合でも、QSI―2を利用して、ある程度安定状態に近似したインキ膜厚を形成することが可能である。
さらに、IPCIIではインキ基準量を再現する機能が装備されており、インキローラ洗浄後でも高精度にインキ膜厚の形成を行うことができる。
 |
|
図7 インキローラ上におけるインキ量の切り替え
|
(6)最大給水機能
印刷開始直後は、版への湿し水の供給が安定状態に至っていないために、汚れが出易い。MAX―Expertでは当社枚葉機で実績のある最大給水機能を標準搭載した。湿し着時に一時的に湿し供給量をアップすることで、印刷起動時間を延ばすことなく刷り出し時の汚れ低減を可能とした。
 |
|
図8 SACを用いた加速の効果
|
(7)SAC (Step Acceleration Control)
従来の刷り出し手順では、印刷調整速度で色、見当や断裁見当を合わせても、その後の加速によって天地見当や色が変動してしまい、加速終了後しばらく経たないと状態が安定しない。この結果、印刷調整速度で正紙状態を実現しても加速後に再度品質確認や調整が必要となり、オペレータ負荷の増大や刷り出し損紙の増大をもたらしていた。
SACは、自動見当・カットオフコントローラ・インキ速度関数が追従できるペースで段階的に印刷速度を上げることで、加速中も印刷品質を許容値内に収めることを目的としている。加速ピッチを細かくした結果、最高速までの加速時間は長くなるが、加速に伴う損紙が無くなるために、同じ正紙を生産する所要時間の差は2.5分に過ぎない。(注3)
SACの設定は要求される印刷品質によって簡単に切り替えることができる。例えば見当・断裁の安定性を求める場合、SAC加速時間を大きく設定すれば加速中の品質低下量は低減できる。一方、色品質安定化の点では、SAC加速時間設定もさることながら、インキ速度関数を印刷資材や絵柄の軽重によって使い分けることが重要となる。
(注3)BT2―800にて、300rpmで印刷調整後に SACを行った場合。 |