岩崎取締役は、開口一番、枚葉印刷のこれからをこう話された。
 「これからの枚葉印刷にとって、一番の可能性は両面印刷です。物価は時代を経るにつれて上がってきましたが、印刷物の単価は逆に下がってきました。そのコストをこれまで印刷会社が吸収してこられたのは、印刷機械の性能向上や印刷資材の進歩が吸収してきたのかもしれません。印刷スピードが速くなり、自動化が行われ、そして、機付オペレーター人員が減少できたことによるものです。しかしながら、今以上の高速化と人員減は技術的に限界にきている状況です。ですから製造業として、しっかりとした収益性を上げていくために、生産性を飛躍的に拡大する両面機の導入は大いに進むのではないでしょうか。ワンパス両面印刷での課題が技術革新によって徐々に解決されてきていますしね」
 数年来、凸版印刷では、いっそうの生産性向上と効率化を実現するために、商業用オフセット輪転工場の拡充を図る一方、枚葉工場の集約化を進めてきた。その中で、「ギネスに挑戦!」という社内スローガンを掲げ、各工場に新しく導入した印刷機など生産設備がいかに早く生産目標に達成できるかという運動を展開している。

凸版印刷 情報・出版事業本部の多彩な製品。
 この動きは、現在の印刷業界が置かれている状況をいち早く掴みとっての対応と言えるだろう。商業用オフセット印刷機は技術的進展により多品種小ロット化への対応が進んでいるが、印刷品質や多様性の面で枚葉機に依存せざるを得ぬ印刷物も少なくはない。しかし、生産性という点では輪転機に太刀打ちできなくなっており、枚葉工場の生産性向上が強く求められていると言っても過言ではない。岩崎取締役が指摘されたように、印刷品質と生産性の向上、この両立の大きな可能性を有する印刷機械がワンパス両面印刷機なのである。
 凸版印刷の情報・出版事業本部が、今回の設備導入のターゲットとしたのは、主に週刊誌や月刊誌の表紙と口絵である。既に何年か前に他社製のワンパス両面印刷機を何台か導入しており、両面印刷機のメリットや問題点については熟知していた同社が、新しい両面印刷機として数ある両面印刷機の中からタンデムパーフェクターを選択し、導入された。しかも、表紙を両面機で印刷するのは初めての試みであった。こうした決断の経緯について、岩崎取締役に伺った。
 「従来、表紙は両面機で印刷できなかった分野です。他社でもあまり聞いたことがありません。なぜなら、表紙は特色を使った多色印刷を行うことが多く、金や銀インキを使うケースも多く見られます。また、表紙は出版物の顔ですから、ちょっとしたこすれ汚れも許されません。しかも、紙のコシが強いため、こすられやすいと条件的には厳しいものがあります。当初は、社内でも、表紙を両面機で印刷するのはいかがなものかという意見もありました。しかし、三菱重工がタンデムパーフェクターを開発するという情報を得て、敢えてこれで挑戦しようとしたわけです」
 「現時点で表紙を両面機で刷ることは、挑戦であっても、数年後には当たり前のことになっているでしょう」という岩崎取締役の言葉が印象的であった。