「伝統」という言葉には、頑なに歴史を守り続ける強靭な意志が込められる。そして、その対極に、絶えず変化を求め続ける「革新」という言葉が置かれる。企業のDNAに刻み込まれた、この脈々と流れる「伝統」を生かしながら、どう自己「革新」していくかが、歴史を重ねた企業に課せられた宿命ではないだろうか。
 また、現在の中央一極集中型のメディアから発信される情報を受け止め、独自の地域文化をどのように発信していくかが、地方文化を担う印刷業にとって自らの存在意義を問う重要なテーマであろう。
 こうした課題に正面から向かい合い、優れた印刷文化を創造し続ける印刷会社がある。
 山形県酒田市。江戸時代に最上川舟運と日本海海運の要衝として隆盛を極め、「西の堺」に対し、「東の酒田」と称されてきた地域である。河村瑞賢が幕命を受けて整備した西廻り航路は、酒田に京の文化と活況をもたらした。この地に明治35年の誕生以来、100余年の伝統の上に革新を重ね、庄内の文化を印刷物に紡いできた印刷会社が、「株式会社小松写真印刷」である。
 2002年5月、小松写真印刷は、新社屋を建設し、グループ企業が一堂に会する体制を実現した。この新たなフィールドで、印刷という領域を超え、情報文化の明日を担うために、どんな「革新」を行おうとしているのか。地方文化の醸成と併せ、大変に興味深い。
 建設がなったばかりの新社屋を訪れ、佐藤 孝 社長にお話を伺った。