グループ内のモデル工場でもあるゼンリンプリンテックス本社屋。

 北九州市門司区松原。目の前に玄海灘を臨む風光明媚な環境にゼンリンプリンテックス本社屋は建つ。グレーと白を基調にして、緑、黄、赤を配した美しい外観は、平成4年度北九州市建築文化賞(産業建築物部門)を受賞している。この本社屋はゼンリンプリンテックスの設立時に新築されている。その外観からも未来を志向する新しい総合印刷会社への強い意欲が伝わってくる。
 応接室に登場された大迫社長からは、ゼンリンプリンテックスの次代を構想する若々しさと強い意志が感じられた。
 平成4年4月にゼンリングループ内の関連印刷会社2社を、ゼンリンの印刷生産部門が統合する形で、ゼンリンプリンテックスは誕生した。ゼンリンプリンテックスは、住宅地図で全国にその名を知られるゼンリングループにおいて、生産部門の中核を担う。
 ゼンリンからの独立時に掲げられたもっとも大きなテーマは

「顧客第一主義を根幹にした、価格に対するチャレンジだった」と大迫社長は語る。

 ゼンリンプリンテックスが誕生した当時の売上比率は住宅地図の印刷が約80%、一般商業印刷が約20%だった。ゼンリンから受注する住宅地図の印刷に圧倒的なウエイトが置かれた構成比である。
「ゼンリングループ内で確立していた住宅地図の価格体系に対して、疑問を呈したのが元社長でした。住宅地図についてゼンリンは圧倒的なシェアを持っていましたから、価格決定力もありました。そのため社員は誰もその価格の妥当性について考えたことがありませんでした。しかし、10年前に、元社長は『このままの価格では将来に大きなリスクを背負う』と危惧したわけです。そこで、もう一度価格に対するチャレンジを行うことが、ゼンリンプリンテックス誕生の大きなポイントのひとつでした」と大迫社長は語る。
 こうして、ゼンリンプリンテックスは、“価格に対するチャレンジ”をテーマにスタートする。住宅地図の印刷に対して、一般商業印刷の比率を約50%にまで高めること、年商100億円の達成、この2つを10年後の中期事業目標として挑戦が始まる。
 大迫社長は経緯を説明する。
「グループ内で自立するために、一般商業印刷の売上比率を5割にまで高めていくことはたいへんに重要なポイントでした。その過程で、他の印刷会社と競合したとき、現在当社が提出できる見積では仕事が受注できない、というケースに多く直面しました。どうすれば他社に負けない見積が出せるかという検討や内部努力が積み重ねられ、意識も変わっていきます。こうしたチャレンジを積み重ねていくなかで、一般商業印刷の比率が5割を超えるところまできたのです。売上で言えば50億円ということになります。北九州で年商50億円の一般商業印刷というのはすごいことです。その点で大きなチャレンジであったと思います」
 当然ながら、製造コストを徹底して見直し、下げていかなくては競争に勝てない。そのためにはどうしたらいいのか。あらゆる部門でコスト意識が高まっていく。こうした一般商業印刷での価格に対する意識が、当然ながら、住宅地図に代表される地図印刷の分野でも大いに反映されてくる。
 
工場内に整然と並ぶ枚葉機DAIYAシリーズ。   マッキントッシュが並ぶプリプレスルーム。
地図データ編集に特化したベルギーのバルコシステムもラインナップ。
 大迫社長は、その本質をこう言い切る。
「真に顧客の立場に立って価格を考えていけるかどうかがもっとも大切です。原価があってそれに積み増しして価格が決まる。こうした印刷会社旧来の価格の考え方では駄目です。顧客が求める価格が最初にあって、その価格を実現するために製造コストをどう下げ切るかというチャレンジをつづけていかなければなりません」
 住宅地図に関して、全国規模でゼンリンは圧倒的なシェアを確保している。しかし、地方や地域を限定してみれば、多くのライバルがいる。住宅地図印刷の分野でも、価格に対する意識はますます重要になっている。
 ゼンリンプリンテックスが誕生して10年が経った現在、ゼンリンは住宅地図の価格を下げている。それでも、発行部数はやはり減少してきているという。
 ゼンリンプリンテックスは、ゼンリングループの「友愛、奉仕、創造」の社訓が示す「善隣」精神という顧客満足第一主義を根底に、価格へのチャレンジと言う課題に挑戦しつづけ、創業10周年を迎えた現在、住宅地図印刷と一般商業印刷を両輪とする総合印刷会社へと大きな飛躍を遂げようとしている。

多彩な印刷物が目を引く製品展示コーナー。