聴覚障害社員向けに手話通訳者を依頼して行う全社員での教養講座。

  アイワード発展のシンボルとも言うべき、1998年に竣工した石狩工場を見学した。札幌から車で30分ほど走り、幹線道路からアプローチすると、北海道の青空を背景にオフホワイトの石狩工場が目を引く。壁面に掲げられた”i WORD“のロゴが印象的に映る。工場内を一巡した。延べ約9400mのゆとりある工場内には、CTPなどの刷版設備、新鋭の印刷機械、多彩な製本設備などが美しく並ぶ。各部門間の理想的な物流を考慮して、工場はすべて平屋建て。しかも、印刷・製本など各部門の床は、驚くことに何とフローリングである。一日中立ち仕事をする社員が疲れにくくするための工夫であるという。美しいフローリングの上にオフセット輪転機までもが配置されている印刷工場は、日本全国を探してもここだけではないだろうか。デザイン・編集を統合したプリプレスの生産ラインは本社(札幌市)にある。そこから送られるDLT(磁気テープ)に収められたデータをもとに、刷版・印刷・製本・発送を石狩工場が担当、無駄のない一貫生産ラインを実現している。

 この新鋭工場を束ねるのが工場長の鈴木礼子常務取締役である。さっそく石狩工場設立の経緯について伺った。石狩工場は別々に所在したアイワード本社工場、大通工場、興国印刷という3つの工場が、ひとつにまとまったものであり、当初は、各社の歴史を引きずった社員の混合部隊ということもあり、大変に苦労したという。

工場全体が一つにまとまらないと良い製品、質の高い印刷物はできません。もちろん納期は守っていましたが、お客様が満足のいく製品という点では課題があったように思えます

と鈴木常務は工場設立当時を語る。
鈴木礼子常務取締役工場長
 そして、迎えた2年目。納期、時期に関係なく、常に同レベルの高品質な印刷物を作ることをテーマに取り組みはつづいた。工場内の意識が一つにまとまるにつれ、印刷物の品質もいっそう安定していく。設備面でも、2000年にCTP、そして、今年2001年に三菱重工のA全判オフセット輪転機「LITHOPIA AY1│700」を導入し、新工場落成時に導入したB半裁判オフセット輪転機「LITHOPIA BT2│800」と合せて2系列のオフセット輪転機体制となる。


「ようやく設備の面、環境の面を整えることができました。工場内の意識も一つになってきました。次の課題は生産性を上げることですね。そのために土台となる人をもっと育てていきたいです」と鈴木常務。
 三菱重工のオフセット輪転機について話を聞いた。

今年導入した三菱重工A全判オフセット輪転機。
A輪(A全判オフセット輪転機)は、工場のみんなが待ち望んでいた機械です。これまでは3万部であろうと5万部であろうと、枚葉機で刷っていました。短納期のしわ寄せは、製本部門にかかってきます。小ロットで短納期の仕事を既設のB輪(B半裁判オフセット輪転機)にシフトすることで、製本も含めた全工程で生産性の向上が可能なことは実感しているので、A輪が入るのを、枚葉機部門も製本部門もとても楽しみにしていたんですよ。印刷品質についてもテストをしましたが、まったく問題ありません。このA輪の導入によって、これまで枚葉機で刷っていたA判書籍類の印刷効率が高まりました。お客様に喜んでいただける高品質の印刷物を、納期に間に合わせることができます。枚葉とオフ輪の境界にこだわるより上手な使い分けが重要だと痛感しました。これからはいっそう稼働率を高めて、生産性を上げていきたいと考えています

と今後に期待をにじませる。
 伊東千秋オフ輪印刷部部長からも現場の声を聞いた。

伊東千秋オフ輪印刷部部長
A輪は立ち上がりが難しいという話を聞いていたのですが、驚くほどスムーズに立ち上がっています。QSI(クイックスタートインキング)やSPE(スマートプリントエンド)など準備時間短縮や損紙低減のための装備もありますので、小ロットでの生産性アップの効果に期待しています。
 当社の場合、90%が社内CTPで刷版を行っています。刷版出力の段階で製版カーブを変えて輪転用の刷版にしていますが、スムーズです。今A輪が入って、実験しながらデータ作りをするためにちょうど良い機会だなと思っています。それだけ基本性能が安定しているということですね

 木野口社長は石狩工場についてこう語った。

多いときは1つの仕事で100トンくらい紙を使う仕事が入ってきます。100トンの紙を運んできて、データ処理・組版・製版を行い、印刷・製本・発送となったら、大都市では大手の印刷会社を別として、中小印刷会社では1社で処理することは無理ですね。紙を運ぶだけでも大変で、置いておく場所もないと思います。ですから、急ぎの仕事はかえって北海道の私どもに任せて貰った方が早いと思います。当初は大都市のお客様から、北海道に持っていったら時間がかかるだろうと言われたのですが、今では私どもの方が早いと言われます。一貫生産体制で、24時間印刷機械を回して、ほとんど時間的な無駄がないのが石狩工場の特徴ですね

各社屋の入口には、ハートフルマーク(左)、「ISO9001」認定マーク(右)が堂々掲げられている。ハートフルマークは全国重度障害者雇用事業所協会が制定した会員事業所共通のシンボルマークで、アイワードには、多くの重度障害者が生き生きと働いている。
 この理想的な石狩工場の完成により、一貫生産体制を確立したアイワードは、全国にその事業活動の領域をいっそう広げようとしている。